中小企業の取締役会 ~ リモート開催・出席 と 取締役会議事録 |中小企業のM&A・事業売却のためのリーガルコンシェルジュ

中小企業の取締役会 ~ リモート開催・出席 と 取締役会議事録

取締役会をリモート開催する方法と 取締役会議事録の記載例              

インターネットや電話会議システムを使った取締役会の開催が可能です。
是非ご活用ください。
その場合の取締役会議事録の書き方(記載例)もご紹介します。
 

このところ、取締役のリモート出席についてご相談を受けることが多いです。

そこで、M&Aとは直接関係ありませんが、このコラムで紹介させていただきます。

 

1. 取締役会のリモート開催について          

 

取締役が一同に集まることが難しい場合があります。

取締役の一部が海外にいたり、あるいは出張中であったり、はたまた現在のコロナ禍のように出社や外出、対面が制限されることもあります。

 

そのような場合でも、遠隔地、自宅、海外から、インターネットのweb会議や電話会議などを使って、適法に取締役会に出席することができます

 

テレビ会議や電話会議を使った方法が、出席と認められるためには、

現実に一同に集まった場合と同程度に、自分や相手の反応が即時に伝わり、適時的確に意思疎通できる状態

であることが必要とされています(*)。

 

現在多くの方が使われている、web会議の方法であれば、安定的な通信状態さえ確保できていれば、十分にこの要件を満たしているといえます。

よって、web会議を使って、取締役会を開くことが可能です。

 

なお、最近 以下のご質問もいただきました。

 ① 通信状態を安定させるため、画面を途中でオフにしたり、一部の出席者はオン、一部はオフでも差し支えないか。

 ② 誰も会社に来ない場合、極端には全員自宅でも構わないか。

 

①は、差し支えございません

大事なのは、適時的確に意思疎通できる状態にあることで、画面の有無は要件ではないから、です。

 

②のように、全員自宅から出席しての取締役会も可能と考えられます。

会社法では、議事録の記載事項に「取締役会が開催された・・・場所」と書かれており、リアルな開催場所は必要です。

ただし、開催場所は会社でなければならない、という制限はありません。

 

そこで、例えば、議長の自宅を開催場所にして、そこに他のメンバーがリモートで出席する、という方法は可能と考えられます。

(なおこの場合、取締役会議事録における「開催場所」は、議長のいた場所を記載することになります)

 

ちなみに、このようなリモート出席の方法以外にも、そもそも取締役会を開催せずに決議する方法もあります

全取締役が書面で同意することで、取締役会決議があったとみなすものです(会社法370条**)。

みなし取締役会(決議)、書面決議 などと呼ばれます。

 

なお、この書面決議の方法を実施するためには、定款に定めを設ける必要があります。また、書面決議の提案に監査役等が異議を述べないことも条件になります。

取締役会書面決議の定款 例)

第●条(取締役会の決議の省略)

 取締役が取締役会の会議の目的事項について提案した場合、当該事項の議決に加わることのできる取締役全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、取締役会の承認決議があったものとみなす。ただし、監査役が当該提案に異議を述べたときはこの限りでない。

 

2. リモート出席した場合の取締役会議事録の記載について           

記載例の一部を 書式としてご紹介します。

 

① 開催場所 : 本社住所 または議長のいた場所を記載します

例)

東京都●●●区●●● 当社本店会議室

東京都●●●区●●● 議長宅

 

 

② 議事の経過 : 1で述べた条件を満たしていることを記載します。

例)

〔冒頭〕

代表取締役●●●は定款の規定により 議長になり、審議に先立ち、テレビ電話会議システムにより、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認したうえで、開会を宣し、 議事に入った。

 

〔末尾〕

以上でテレビ電話会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく全議題を終了したので、本日の議事を終了し、議長は●時00分に閉会を宣した。

 

③ 開催場所にいない取締役の出席方法 : 

リモート出席した取締役と、その出席方法を記載します(会社法施行規則101条3項1号)。

 

以下の取締役は、テレビ会議システムにより本取締役会に出席した。

 ●●●取締役、●●●取締役、●●●取締役

 

なお、リモート出席した取締役の参加場所(自宅等)は記載する必要はありません

 

 

3. ご参考になりましたでしょうか                 

通信機器や環境の飛躍的な発達で、リモート会議も非常に簡単に実現可能な時代です。

取締役会でも、是非 迅速な意思決定にご活用いただければ幸いです。

 

なお、株主総会も、諸々の条件をクリアすれば、リモートやバーチャルでの開催が可能です。

この点は、また別のコラムでご紹介させていただきます。

 

 

 

* テレビ会議室システムについて:法務省平成8年4月19日付け「規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」

電話会議システムについて:平成14年12月18日 法務省民商第3045号法務省民事局商事課長通知)

 

** 会社法第370条(取締役会の決議の省略)

取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

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