法務の力で会社の価値を高めるとはどういうことですか?
SUMMARY
・ M&Aの対象は一点物かつ生ものの高額商品
・ 事前の法務体制の整備や問題点の解消、説明書の作成などにより商品価値を高める
M&Aの対象となる会社や事業は、一点物かつ生もので、しかも高額商品です。
このため、より高い評価を得て買ってもらうためには、買う側が抱くであろう不安材料をできるだけ減らし、会社や事業の良さをより良く理解してもらえる状態にしておく必要があります。問題点ばかりで手を出しにくい会社であれば、そもそも買受候補者自体が現れない、といこともありえます。
もちろん、「わかる人にはわかる」という考えもあるかも知れません。
しかし、冷静に会社や事業を売買の対象と捉えた場合、市場原理としては、似たような売り物があれば、より買いやすく(不安材料がなく安心)、そして買った場合のメリットがより明確な(訴求できている)ものの方が売れる、というのが事実でしょう。
一見すると事業としては安定して収益を上げているように見えたとしても、例えば、
・ 残業代の不払いや労務管理体制に不備があり、いつ従業員から裁判を起こされてもおかしくない
・ 取引条件が口頭だけで決められて曖昧、いつ条件が変わったり取引がなくなってもおかしくない
・ 親族その他の少数株主がいて M&Aが成立するかどうかもわからない
・ 会社資産と経営者資産の区別が曖昧で、公私混同が多く見られる
・ 許認可や法令上必要な設備、人員を欠いている
といった不安材料があれば、その会社が唯一無二でない限り、買受希望者は、より不安材料の少ない会社を探そうとするでしょう。
逆に、今現在はこのような法務面での不備や不安材料があったとしても、事前に時間をかければ、これらを少しずつ解消していくことも可能です。
あるいは、解消には至らなくとも、買い側がDDで調査した結果として不備が発覚するのではなく、売り側から、課題は課題としてきちんと把握し、解消に向けた準備を進めている状況の開示があれば、買主の見方は大きく違ってきます。
・ 法務面の不備がきちんと把握されている、課題と是正に向けた動きが明確
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・ 事業引受後の不安材料が低減される 買収後の手間・コストが下がる
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・ 引き受け手の間口が広がる 他との差別化になり 買受候補者が増える
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・ 引受候補者が複数あれば 需要と供給の関係から 売り側としての価格競争力も高まる
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・ M&A条件交渉を優位に進める材料となり 価値評価・譲渡価格にも反映される