M&Aという取引の特徴を知りたい
SUMMARY
- ・ 取引の対象が、会社や事業という複雑かつ一点物、という特徴があります
- ・ 取引の検討や実行に際して、M&Aへの適切な理解や専門知識が求められます
- ・ 取引額やリスクが相対的に高額となりがちです
① 取引の対象となる会社や事業は、極めて個別性の強い、いわば一点物の商品です。
しかも刻々と状況の変化する生ものでもあります。
個々の資産やサービス、雇用関係だけではなく、それらが一体となって営まれている事業が取引の対象であり、同じものはこの世に二つとありません。
ですので、M&Aをする場合には、そもそもの取引対象である会社や事業が、期待どおりの内容と値段であるかどうか、買い側も入念にチェックする必要がでてきます。このチェックとして必要なのがデューディリジェンスであり、調査結果のレポートが、いわば対象商品の仕様書、取扱説明書の機能も果たします。
一方で売り側は、もともと売るつもりで会社や事業を保有しているわけではないので、コストをかけてまで、買い側が望むような説明資料をあらかじめ用意していることは稀です。これを逆手に取ると、買い側が求めるであろう資料が整然と準備されており、さらには簡易でも調査した結果を文書にまとめたものがあれば、買い側としても手が出しやすくなりますし、価格に前向きになりえます。また、M&Aを見すえた準備が整っていることや、場合によっては他にも売り先の候補がいる可能性をアピールでき、価格競争力が高まります。
② 取引内容の専門性
対象が複雑な一点物の商品であるがゆえに、購入(M&A)をしたあとも、
・少なくとも購入時点の事業が維持されるか
・想定していないリスクがないか
・リスクが顕在化した場合には誰がどう責任を負担するか
などが取引にあたって問題となります。
このため、日常的な物の売買やサービス提供などと比べて、M&Aの取引スキームや契約内容は複雑になりがちですし、複雑な一点物・生ものを対象とする取引であるがゆえに、取引の方法、契約条件、価値評価、税務面など、専門知識やノウハウを活かした対応が必要です。
③ 取引額や責任が相対的に高額
ケースバイケースですが、取引額は相対的に高額となりがちです。
資産やサービスを個々に取引するのと違い、会社や事業を丸ごと取引するためです。しかも、いったん終えた取引を解消して巻き戻すことは、基本的に困難です。
また、取引額が高額であるがゆえに、取引に伴う経費や、取引後の取引相手に対する補償責任なども重いものとなりがちです。
取引に伴い、想定外の責任や負担、リスクを抱え込むことにならないよう、M&Aの実行にあたっては、適切なリスクの把握と契約での手当が不可欠となります。