M&Aの候補先が見つかった段階での一般的な注意事項を知りたい |中小企業のM&A・事業売却のためのリーガルコンシェルジュ

M&Aの候補先が見つかった段階での一般的な注意事項を知りたい

SUMMARY

  • ・ 相手先の意向や取引条件が、当方の希望条件と歩み寄れる範囲内か、を見極める必要があります。
  • 売り側として、商品である会社や事業を正しく理解してもらうための情報開示、資料等の提出が必要です。
  • 買い側としては、候補となる会社や事業が、自社の目的や獲得目標に見合ったものであるか、引き受けるによるリスクがないか、などについて、調査が必要です。
  • 特に売り側では、取引成立に至らない(売れない)場合のことも視野に入れて対応する必要があります。

1. 意向や条件が見合う可能性があるかの見極め

候補先が見つかると、その後は取引についての具体的な協議を進めることになります
M&Aは基本的に大きな取引ですので、最終的な契約に至るまでには、協議や事前の調査対応など、相応の時間と労力が必要になります。
そこで、取引に向けた協議を開始する前提として、そもそも成約の可能性がどれほどありそうか条件等で折り合える見込みがありそうか、という点を確認しなければなりません。

仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)が関与しているケースでは、それぞれが希望する主要な取引条件をあらかじめ伝えたうえで募集をかける場合が多いので、まずは仲介人を通じた情報で判断をします。買い側から、基本的な買収条件等を記載した意向表明書の提出をうけることも多いです。双方の経営層同士が、直接意見交換をする場合もあります。

初期段階では、詳細の調査を経ていませんので、特に買い側の金額提示などについては、調査後に変更されたり、新しい条件が追加されたり、ということも少なくありません
ただ、それ以外の点については、会社や事業の文化、雇用を今後どのように取り扱っていくかなど、M&A後のビジョンについて、初期の段階で売り側と買い側とで価値観を共有できると、その後の協議がスムーズに進行するケースが多いように感じます

2. 情報開示および調査

M&Aの基本条件について折り合いがつきそうな場合には、さらに深く会社や事業の情報を把握するため、買い側による具体的な調査(デューディリジェンス)に進むケースが一般的です。

売り側にとって、この調査対応がM&Aを成功させるための山場の一つでもあり、商品である会社や事業を正しく、かつより良く理解してもらうチャンスでもあります。そのため、買い側から求められる情報や資料を、相手の意図をくんだうえで、適切かつスピーディに提出することが肝要です。
ここで資料や情報の提出が滞ったり、内容が不正確だと、情報の信憑性に疑問をもたれ、必要以上にリスクと捉えられたり、価格のディスカウント要因として使われるおそれもあります。

このような不利益を避けるためには、日頃から情報や書類の管理を整備しておくのももちろんですが、特にM&Aを意識して、
あらかじめ
  調査対応に向けた情報整理や文書化
  リスク事項の把握と対処方法の整理
といった事前準備をしておくことが、非常に効果的です。

このような事前準備は、財務会計については顧問の会計事務所など、法務面については顧問弁護士やM&Aの専門家などに依頼して進めていきます。

一方、買い側も、
  譲り受け価格の判断やリスク事項の把握
  契約書へ反映すべき事項の抽出
のため、対象企業(事業)の詳細調査は欠かせません

どこまでの調査をやるか、外部専門家の手を借りるか、といった点は、価格の規模や買い側の経験値などによって個別に判断されますが、よっぽどM&Aに手慣れた会社でない限り、少なくとも財務関係については外部専門家に依頼してデューディリジェンスをする場合が多いと思われます。

3. 取引成立に至らないケースを見すえた対応(主に売り側)

候補先がみつかり、情報開示や調査がスタートしたとしても、必ずしも取引がまとまるとは限りません。条件が折り合わないなどで、最終的にM&Aに至らないこともよくあります
そこで、特に売り側としては、情報開示にあたっては、取引成立に至らない可能性も視野に入れた対応が必要です。

例えば、M&Aの協議をしている事実が社内に漏れ、しかもそれが結局取引に至らなかった、ということを従業員が知れば、今後働き続けるうえでのモチベーションに悪影響を与えるおそれもあります。このため、情報管理には万全を期す必要があります。

また、たとえ候補先と守秘義務契約を結んでいたとしても、情報開示により一度知られた事実を取り戻すことはできません。初期の段階で、不用意に重要な情報を開示してしまうと、その情報だけをとられて事実上利用されてしまうリスクがでてきます。

例えば、明確に権利化されていないビジネス上のアイデアやノウハウを知られて真似をされたり、人手不足の業界などでは、従業員の名簿や役職を把握したうえで、後日秘密裏に引き抜き行為が行われたりすることもあり得ます。
このような場合、事後的に損害回復が可能場合もありますが、立証が難しいケースも多く、またそのような法的対応に時間やコストを強いられること自体が、会社にとって大きな損失です。

売り側も基本的には取引を成立させたいのが本心であり、また、本格的なデューディリジェンスまで進んだタイミングで開示情報を制限するのは難しい面もありますが、特に初期段階では、開示情報の取捨選択や資料の加工等について配慮する必要があります。

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